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2006/03/07

よみがえる源氏物語絵巻

 上野毛に行く。というか、上野毛ってどこ? なんて思いながら東急大井町線に。目指すは五島美術館。「よみがえる源氏物語絵巻」を見に行くためだ。

 「源氏物語絵巻」は『源氏物語』全54帖の各帖から2、3場面を選んで、絵と物語本文の詞書(ことばがき)で綴った絵巻。
 で、今回は現存最古の国宝「源氏物語絵巻」(12世紀製作。『源氏物語』成立から約150年後)を、蛍光X線分析器やX線写真などを使った科学調査を行い、平安の絵師たちが描いた当時の状況に近づけて再現しようというプロジェクトが終わったので、特別展が催されたのだ。

 ちなみに、現存するのは「蓬生」「関屋」「柏木一」「柏木二」「柏木三」「横笛」「鈴虫一」「鈴虫二」「夕霧」「御法」「竹河一」「竹河二」「橋姫」「早蕨」「宿木一」「宿木二」「宿木三」「東屋一」「東屋二」のみ。

200603051541000

 展示は、

①原本(の写真)
②今回の科学的アプローチで復元模写された「平成復元模写」
③昭和三十年代に日本画家の桜井清香さんの手によって復元模写されたもの
 
 の三つが並べられている。それぞれ比較することで、今回の科学的アプローチの達成を見ることができるわけだ。だがしかし、やまと絵の研究者でもある桜井さんが、原本の観察と有職故実などの知識を総動員して、科学的アプローチにほぼ近い形で復元できていることも見過ごしちゃいけない。人間ってすごいな、と思いますよ。

 さて、X線の分析器で顔料を元素レベルで特定できたり、X線写真で肉眼では把握できなかった花びらや装束の文様を確認できたりしたことで、鮮やかに、くっきりと、「源氏物語絵巻」は約900年前の姿をよみがえらせたわけだけど、ぼくがいちばん目を引かれたのは、蘇芳による赤。昭和三十年代の復元模写の赤は葡萄茶に近いのだが(くすんだのかなあ)、今回は蘇芳を顔料として使っているとわかったそうで、思いっきり赤い。それから、黄はだ色も強かったね。

 そして、印象に残ったのは「柏木二」。柏木は女三宮への禁忌の恋の果てに、身を滅ぼしてしまうわけだが、心配して寄り添う夕霧が、今回の科学的調査で桜の直衣を着ているとわかったそうで、それが見事に再現されている。伏している柏木の手前に置かれた銀白の壁代にも桜の文様があしらわれていることと合わせれば、死にゆく柏木を包み込むように桜が配されているのであって、それはやはり女三宮を垣間見た運命的なあの桜の日を、この最後というときに思い起こさせる記号となっているのかもしれない。

 ということで、落剥したり退色したりといかにも古色蒼然といった世界に『源氏物語』の物語世界を思い浮かべがちだけど、実は登場人物たちの愁いやら懊悩やらは極彩色の舞台を背景にあった、といったことをハッと気づかされるいい展覧会でしたよ。

 ぜひ五島美術館へ。

 ってなんだか宣伝みたいだな。

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コメント

こんにちは
記事見るまで展示やっているの忘れてました。
当時の彩色を再現すると寺院とかでも極彩色になるんですよね。古びて落ち着いた色彩のものを見慣れているせいか、極彩色の方はなぜか嘘くさく感じたり...
もっとも、今は光源が発達しているので昔よりも鮮やかに見えすぎているのかもしれないですけどね。

投稿: しまなか | 2006/03/07 21:01

こんにちは、しまなかさん。

> 極彩色の方はなぜか嘘くさく感じたり...

これはよくわかります。
たとえば、平安時代を舞台にしたドラマをテレビでやっていると、やけにカラフルで、なんかちがうなー、とか思ったりしますよねえ。

> 今は光源が発達しているので昔よりも鮮やかに見えすぎているのかもしれない

なるほど。たしかに。
平安時代は電気がないのが当たり前。
本当はもっと暗く見えていたのかもしれませんね。

投稿: セキグチ | 2006/03/07 22:03

こんにちは
今回の復元品、徳川美術館でやったときの図録(だと思う)を見せていただいたことがあるんですけど、やっぱり質感などは写真ではなく本物を見ないとだめですよね。と言うことで、近々見に行こうと思います。

投稿: しまなか | 2006/03/08 11:06

ずっと前・・・。レオナルドダビンチの最後の晩餐を見に行きました。
ちょうど修復作業をしているところで(常に何かしらの手は入れているそうですが)想像よりも鮮やかな色づかいであるのに驚きました。
ヨーロッパでは修復という作業が一つの芸術として認められ、大学などでも専門課があると聞きました。日本でも修復、復元という専門職がありますが、なかなか芸術としては受け入れられないようですね。
海外も日本も昔はもっと華やかな彩りの世界だったのでしょうね。

投稿: miomio | 2006/03/08 17:18

こんにちは、しまなかさん。

質感ですか。なるほど。ぼくはカラフルさに見入っていて、そこまで気が回りませんでした……。
でも、よーく見ると、桜の花びらにしても、濃淡があったりして、筆遣いは感じられましたよ。ぜひ、行ってみてください。

あ、ぼくが行った日は、かなり混んでましたけど。

こんにちは、miomioさん。

そうそう。このブログの文章だと、「平成復元模写」についてはコンピューター、コンピューターとばかり書いてありますが、分析したのはコンピューターでも復元模写をしたのはやはり日本画家のかた。加藤純子さんや、ほかの方たちでした。
ああいう方たちの技術はすごいですね。修復過程を追ったNHK番組のビデオを館内で流しているのですが、鬼気迫る表情で修復されていましたよ。すばらしい芸術だと思いました。

投稿: セキグチ | 2006/03/08 18:22

こんにちは、
こちらは逆にどうしても技巧的な事に目がいって、物語をどう絵に表現しているのかとかいった観点に疎いです。本当はそちらの方が重要なんですけどね。
あと、絵よりは描かれている調度品や装束などの実物の方が気になったり...

投稿: しまなか | 2006/03/09 09:53

こんにちは、しまなかさん。

> 技巧的な事に目がいって

しまなかさんは絵に心得があるんですか?
ぼくはあんまり……。
まあ、五島美術館に行ったらぜひ感想を聞かしてください。。

投稿: セキグチ | 2006/03/10 17:26

こんにちは
絵心はそんなに無いです。
だだ元々物の構造とかが気になる性分なんで、どう描かれているか気になっています。

投稿: しまなか | 2006/03/10 17:39

こんばんは、しまなかさん。ココログが止まってしまってさんざんでしたね。

> 元々物の構造とかが気になる性分なんで

探究心があるってことですかね。ぼくはすぐに「ほへえ~」と感心しちまうタチなんで、そうなりたいと思ってはいるんですが。。

投稿: セキグチ | 2006/03/11 22:07

こんにちは。
探求心というか、重箱の隅というか...(笑)
見に行くのはなんか最終日直前の予感。
この手の催し物が好きな友人の都合がその辺しかつかないので...

投稿: しまなか | 2006/03/13 19:37

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